東京高等裁判所 昭和29年(う)726号 判決
被告人 渋井敏勝
〔抄 録〕
弁護人の論旨第一点について。
文書偽造罪は他人の作成名義を詐わり新たに文書を作成した場合にのみ成立するものではなく、たとえ既存の真正なる文書を変更する場合であつても、その重要なる部分を変更し、そのため変更前の文書とは別異の証明力を具有する文書となすときは、変造を以て論ずべきではなく、偽造であると解するのが相当である。本件についてこれを見るに被告人は東京都特別区公安委員会から下付せられた同委員会の押印ある原判示各自動車運転免許証につき、その「免許の種類」「免許年月日」等の各欄に、それぞれ従前とは別異の新たなる記載をなし、或はその写真欄貼付の写真を剥がして全く別人の写真に貼り替えたものであつて、かくの如きは自動車運転免許証の性質に鑑み、その重要なる部分に独立の事項の記入又は変更を加えることによつて一の新たなる証明力を具有する文書となすものであるから偽造罪を構成すものといわなければならない。それゆえ、原判決が被告人の原判示各所為を公文書偽造罪に問擬したのは正当であつて、論旨は理由がない。